01比較構文の研究

比較構文は様々な慣用句も含めて、理解・暗記の両面において学生にとって難しい分野の一つである。しかし、英語の比較構文の世界は実は非常に数学的に整合性のとれた世界で、これから説明する基本応用を理解し記憶すれば、必ず克服できる分野である。


基本

A is more beautiful than B. = A is not less beautiful than B. → A>B (AはBよりも美しい)

A is less beautiful than B. = A is not more beautiful than B. → A<B (AはBほど美しくない)

上の表の A is more beautiful than B という例文は、中学校で習う非常に基本的な比較の構文である。この英文が不等式の A>B の意味になることは容易に理解できる(それ故に名称も優等比較と呼ばれる)。そして、その否定文が A<B(正確にはA≦B)であることも理解できるであろう。notによる否定は意味が逆転するという通常の理屈で考えればよい。問題は、中学校では教えられない A is less beautiful than B という例文の方である。この表現が教えられない最大の理由は文章体で堅い表現であるということだが、同時に、同じ意味を表す簡単な表現があるからである。

A is less beautiful than B. = A is not so (as) beautiful as B.

中学校で教えられる同等比較の構文の否定文が同じ意味を表す。中学生が最初に、この否定文を習ったときによく「AはBと同じではない」と訳して間違うのだが、もちろん、この2つの同じ意味を持つ英文はA<Bの意味になる(劣等比較と呼ばれる)。比較とは当然、相対的なものなのだから、AがBより上か下かということになる。そうすると--ermore+原級で表される優等比較(AがBより上)の世界だけでは不完全である。そこで、less+原級で常に表される劣等比較(AがBより下)の世界が必要となる。実際には、同等比較の否定形で代用されることの多いこの劣等比較の世界を理解することで、慣用句として強制的に暗記させられるlessがらみの表現を、明確に理解して覚えることができる。たとえば、上の表の A is not less beautiful than B. という表現は「AはBに勝るとも劣らず美しい」とイディオムとして教えられるが、「AはBより下ではない→AはBより美しい」と大ざっぱに考えてほぼ間違いない。応用編で扱う様々な慣用句も、この劣等比較をまず理解することでかなりわかりやすいものとなる。


応用

A is much more beautiful than B. A>B(差は大
A is a little more beautiful than B. A>B(差は小
A is no more beautiful than B. A=B(差はゼロ・否定的な意味で同じ
A is no less beautiful than B. A=B(差はゼロ・肯定的な意味で同じ
A is a little less beautiful than B.   A<B(差は小
A is much less beautiful than B. A<B(差は大

クジラの公式と呼ばれる no more --- than というイディオムは、本当に暗記するしかないのか。上の表を注意深く理解すれば、そうではないということがわかる。そこで、比較の基本をもう一つ確認しなければならない。

Taro is two years older than Keiko. (差は2歳

Taro is much older than Keiko.  (差は大

Taro is a little older than Keiko.  (差は小

上の3つの例文を見てもらえばわかるように、英語では比較級の直前に程度の差を表す具体的な数値や副詞類を置くことができる。基本編でも述べたように、比較とは2つの物を相対的にどちらが上でどちらが下かを比べるものなのだから、その2つの物には程度の差があるわけである。その差を具体的に、あるいは詳しく表現する必要がある時に、上の例文のような語句が比較級の直前に添えられる。そして、何よりも大切なことは、否定語の no は比較級の直前に置かれるときは、これらの程度の差を表す語句の仲間だということである。その表す程度の差は no=ゼロ である。つまり、差がゼロなわけだから、2つの物は同じなのである。このことをよく理解してもう一度上の表を見てほしい。A is no more beautiful than B. も A is no less beautiful than B. も、美しさの面でAとBが同程度だということを意味している。ただし、ここでどうしても記憶しなければならないことは、no moreには否定的な意味が残り、no lessは、lessの否定的な意味とnoが打ち消し合って結果として肯定的な意味になるということである。前者は「AもBも同じように美しくない」の意味になり、後者は「AもBも同じように美しい」の意味になる。特に、後者は A is just as beautiful as B. と同じ意味になり、同等比較に相当する表現である。


 
例題1

I can no more help loving Collin than I can help the rain falling or the trees bursting into leaf.

(訳)雨の降るのや、木々がいっせいに若葉になるのを止められ ないのと同じように、コリンを愛さずにはいられない。

例題2

I dare say when he is as old as I am he'll have no more hair than I have.

(訳)おそらく、彼だってわしの年になれば、今のわし同様髪の毛などあるまい。

例題3

We can't escape the past in our lives any more than we can in our faces.

(訳)我々は顔においても、生活においても過去から逃れられない。

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